花の色

スイス留学中の女子大生

列車の向かいの席のおじさんの人生が熱かった。

布団と研究室を往復する日々。気晴らしに日帰りでミラノに行きました。早朝のバスに乗って、帰りはGleis7を使うため列車で帰りました。バスは片道23ユーロ、帰りはスイスの国境まで5ユーロ。

Panzerotti(ピザを閉じて揚げたようなもの?めちゃ美味しい)をかじりながらドゥオーモの周りをてくてく歩くのは楽しかったです。ミラノを訪れるのは2回目なのですが、ドゥオーモは圧倒的に大きくて華やかで荘厳でした。今回の旅の目的は食べ物。ジェラートカルボナーラもコーヒーも楽しみました。カルボナーラは味が薄くてあんまり口に合わなかった…日本にあるカルボナーラと根本的にレシピが違う気がします。

ひとりで歩いてたからか、日本人の方に話しかけられました。某有名新興宗教の皆様でした。とても気さくで優しく親切な方々でした。心細い気持ちになりがちな異国での勧誘は効率が良いのかもしれません。なんとも言えない。

帰りの電車は3時間以上あったのですが、たまたま乗り合わせたおじさんと意気投合していっぱいおしゃべりしていました。

多量の課題をこなす日々を経てETHZ(スイス1の超名門大学)を卒業し、これで人生安泰だと思ったのに全然そんなことなかった、と語ってくれたおじさん。少ないお給料でひたすら長時間労働させる研修期間に嫌気がさし、また大学に戻って森林学の学位を修めて動物園の飼育員になった。しかし息子が生まれるのを機にまた職を変え、今度はお給料の良いプログラマーになるも一日中パソコンの前に座り続けることに何の意味があるのか見出せず退職。そしてシングルファザーとなり、10歳の息子と車でアラブ諸国を1年かけて旅をした。たくさんの写真を見せてくれた。息子と車と砂漠。民族衣装をまとった女性。露店にたむろう地元の子供たち。おじさん写真撮るの上手だね、と伝えたら、そういえば写真家も経験したことがあるよ!と嘘か本当かわからないことを言っていた。誰もいない砂漠でまだ10歳だった息子に運転を教えたけれど、今ではもう15歳で自分と同じ背丈になってしまった、と嬉しそうに語っていた。そして今はチューリッヒ中央駅前にある小学校の先生をしていて、その職業をとっても気に入っていると言う。こっちの子供はお行儀の良い日本の子供とはわけが違う。あっちでもこっちでも大騒ぎ。天使と悪魔が共存している!とか話していた。

見かけによらずだいぶ大胆な人生だと思うけど、列車でたまたま会った外国の女の子に語るくらいだから自分の人生に誇りと生きがいをもっているんだろう。わたしはおじさんの生き方が羨ましかった。おじさんも多分悩んだこともたくさんあると思うけど、一番価値があると自分で判断して選択してきたんだろう。

わたしは今までの人生、打算や世間体や無難さを気にせず何かを選んだことがあったかな。理系の方が職に困らなさそうだから理系にした。本当は東大行きたかったけど、浪人する勇気が出なかった。周りの理系学生もたくさん進学するから大学院に進学した。研究留学したら履歴書に箔がつくと思ったから留学した。世界大学ランキングが高かったからETHZを選んだ。そして再来年は、人気の大企業のESを書きまくっているのだろう。なんだか私の人生浅くて薄い。やり直したいとかはないし全て納得しているんだけど、打算なしにやりたいことが何なのか見失いそう。食べることは好きなんですが。

自分の人生に誇りをもって、自信に満ち溢れた素敵な女性になりたいです。